Topics トピックス

アドテクの研究テーマの作り方

2020-10-27

Column

SMN株式会社のR&D 部署であるa.i lab.(アイラボ, ambitious innovation lab)の柳沼です。弊社のマーケティング支援ツールであるVALIS-Cockpitおよび広告入札最適化ツールのVALIS-EngineのR&Dを行っております。直近ではWSDM2020という学会において論文が採択されたり、CFML勉強会で登壇させていただきました。

この度テックブログを開設させていただくこととなり、今回は記事の主なテーマとなるアドテク事業のR&D、特に研究についてどのように研究テーマを設定しているかについて記事を書こうと思います。
研究では、大きく分けて2つの軸でテーマ設定をしています。

1. 将来会社を待ち受けるであろう課題の解決に寄与する研究

2. もらって嬉しい広告の実現を目指す研究

1についてもいずれブログを書くつもりですが、今回はより研究的側面の強い
2について書こうと思います。

アドテク事業における弊社の目標

アドテク事業では、Webページやアプリページのオンライン広告の枠に広告をリアルタイム配信する事業を行っています。オンライン広告配信ではTVCMのように枠に決まった広告を流すのではなく広告をパーソナライズできるため、よりユーザーの嗜好に合った商品との出会いを提供することができます。弊社が究極的にアドテクで目指すところは「もらって嬉しい広告の実現」です。パーソナライズするからにはユーザーに喜んでもらえる商品情報を提供することがアドテク企業としての社会的価値の創造に繋がるという考えです。

現状のアドテク

ではアドテクの現場ではどのようなロジックで広告配信を行っているのでしょうか。
現在のアドテクでは、広告枠を持つWebページに訪れた人がもっとも購買する確率の高そうな商品の広告を打っていくリターゲティングと呼ばれる手法が主流です。
例えばECサイトで化粧水をカートに入れた人は明らかに化粧水の購買を検討している人なので、購買する確率は高そうです。そこでそのユーザーが訪れた別のwebページでは化粧水の広告を出そう、というような流れです。もちろんこのような自分の欲しいものを知っている人に広告配信をすることもアドテク企業の重要なミッションであり、多くのアドテク企業がここにコミットしていると思います。

本当に提供したい価値

しかし「もらって嬉しい広告の実現」のためにはもう一つ重要なミッションがあります。それは、ユーザーが潜在的に欲しい商品を広告の形で配信するというミッションです。友達からもらったプレゼントを使ってみたらすごい気に入って使い続けている…なんて経験をされたことはありませんか?ユーザーが気づいていないだけで、ユーザーの嗜好にぴったりな商品の広告を提供することでセレンディピティ(思わぬ嬉しい出会い)が生まれ得ます。このような出会いこそが広告を通じて真に提供したい価値なのです。

実現の障壁

このセレンディピティを実現するためにはユーザーが潜在的に欲しい商品を推定する技術が必要になります。どのようにしたらユーザーが潜在的に欲しい商品を推定することができるのでしょうか。
弊社でR&Dを始めた当初多くのアドテクの論文を参照しましたが、アドテクの文脈で論文を探してもアドテクのKPIをより効率的に達成できたという話が多いため、もらって嬉しい広告配信の実現に繋がる知見を得られにくく調査に行き詰まっていました。(KDDの論文リストでReal-Time biddingなど検索すると面白い論文が引っかかると思います。adKDD19の論文はリターゲティングそのものに対する課題感にチャレンジしています。)

 

推薦システムとの出会い

しかしよくよく考えてみると、この設定何かに似ていませんか?実は、動画配信サービスやECサイトで使われている推薦システムとほぼ同じモチベーションなのです。例えば動画配信プラットフォームの推薦システムなら、ユーザーがまだ見ていない動画の中でそのユーザーの好みに合っていると予測される動画を推薦します。推薦システムの内部ではユーザーが潜在的に見たい動画を予測しているわけです。
推薦システムの設定は実はアドテクでも使えるんじゃないかというわけで推薦システムの研究を調べてみると、推薦システムにはRelevanceという概念がありました。(ExpoMFUnbiased learn to rank の論文がわかりやすいでしょう。)これは、ユーザーがあらゆる商品に接触していた場合に興味を持つかを表す確率変数なのですが、我々が求めていたセレンディピティの実現のカギになると思いました。というのも、セレンディピティとはユーザーが本当は興味を持っているのに接触できていなかった商品に出会うことなので、そのユーザーが商品に接触していたら興味を持ったのか、すなわちRelevanceを予測することでセレンディピティを実現できるのではないかと考えたわけです。
ここまで来てしまえばやることは決まってきます。Relevanceに対して理論的に正しく学習するための研究をアドテクの文脈で実践しようという道筋が見えました。ここを起点に広告配信プロダクトのアルゴリズム改善にも繋がったため、非常に大きな知見だったと思っています。

さて、長くなってしまいましたが、a.i lab.ではかなり自由に研究に取り組めるだけでなく、機械学習についても様々なバックグラウンドのメンバーと議論ができるためこのような知見が得られたと思っています。一見関係なさそうな研究分野でも知見として活用できる一つの例として参考にしていただければ幸いです!始まったばかりの当ブログですが、研究側ではこの記事のような視点で役に立った論文を紹介していくつもりですので今後ともご覧いただけると幸いです。

お問い合わせ

以下問い合わせフォームよりお願いします